illust by 甘ぽてと[KILLCAKE](Grazie!!!)



<つなよし>のためならねる





「ヒバリにはもっと守護者としての自覚を持ってもらわねぇと駄目だ」

梅雨晴れの休日、鬼の家庭教師が命じた宿題全てを、頭に出来たタンコブ二つと壁に弾痕一つ分を刻むという犠牲で何とか終わらせ、一息ついていた矢先のリボーンの言葉に、綱吉は嫌な予感を覚えた。リボーンがこうしてぽつりと、いきなり意味のわからない事を言いだした時、かなりの確率で面倒な事や、タダでは済まないような事が勃発する。思わず身構えるのは当然だろう。

「何言ってんだよ、いきなり……ていうか何でヒバリさん限定な訳?」
「獄寺や山本や笹川辺りは、何の問題もなくオメーを守ってくれるだろう。六道骸も、あいつの仲間の身柄をこボンゴレが預かってる以上、下手な事はやれねぇ。大体、やろうにも本体が捕まってるままだしな」
「でもヒバリさんって雲の守護者ってやつなんだろ? 雲の使命って、なんか……えーと、浮雲? とかいうやつなんだろ? だったら別にヒバリさんの好きにしてもらってりゃいいじゃないか」

第一あの群れ嫌いの人が、群れの中心にいるような俺を守ってくれる訳ないし。
最後の言葉は自分の心の中で呟くに留め、ついでに嫌な予感が膨れ上がっていくのも必死に「気のせいだ」と言い聞かせて押し留める。しかしリボーンの底が読めない淡々とした言い方と妙に真剣な表情が恐ろしく見えた。

「それでも守護とつくからには、ちゃんとボスを守るだけの使命と義務感を持ってもらわねーとな。いざと言う時に困るのはツナ、お前だぞ。第一部下の一人も従わせられないボスなんざしまらねぇだろ」
「そりゃそうだけど……って、いや、俺はまだボスになるって決めてないしなりたくないし!」
「それでも現時点でお前がボンゴレボスの次期後継者の椅子に一番近い場所にいるのは事実じゃねーか。ボスがファミリーのために心を砕くのも、ファミリーである守護者がそんなボスを守るのも当然の事だ。それは浮雲だろうが何だろうが変わりゃしねぇ」

いつになく真っ当な意見すぎて、綱吉はグゥの音もでない。いや、真っ当な意見じゃなくても結局はグゥとも言う暇もなく従わされているけれども。
それでも、よくよく考えればこのリボーンという赤ん坊は雇い主だからか、それとも他に理由があるのか、ボンゴレというものに対してはとても真摯な態度を取る。
今だって、現時点では次期ボンゴレボスになる予定濃厚な自分のために言ってくれているのは間違いない。彼なりにボンゴレというマフィアがこれからも末永く安定した発展と存続が出来るよう、心を配っているという証拠だろう。そう思うと、リボーンの言葉にも少しなら従ってもいいかもしれないと思えた。

「そこでシャマルと共同開発してみたぞ」

前言撤回。
絶対従いたくない。絶対に嫌だ。

「おめーの意見なんざ聞いてねぇ。俺は俺のやりたいようにやる」
「結局そうなるんじゃん! ていうかやっぱお前、自分が楽しければいいんだろ? なあ、そうなんだろ?」
「………この特殊弾が開発結果だ」
「なんだよ今の間! つーか人の話聞けってば!」

そう叫んでみるも、リボーンは相変わらず淡々と説明を続ける。もうこうなると、何を言っても無駄だ。というより下手に反対し続けると部屋にまた弾痕が刻まれる。最悪、自分の身体に銃痕が刻まれるだろう。
唇を突き出して不満を表しつつも、綱吉はひとまずリボーンの説明に耳を傾けた。

「この特殊弾の基本は死ぬ気弾と同じ理屈だ。だからこの弾を撃たれた相手は、死ぬ気状態になるんだぞ」
「……それってつまりパンツ一丁で動き回るって事?」
「これは小言弾じゃねえからな」

パンツ一丁で町を駆け回る恥ずかしさは、やった人間じゃないとわからないだろう。いや、誰だって恥ずかしいとわかっているからやりたくないんだろうし、こっちだってやりたくてやってる訳じゃないから、我に返った時の恥ずかしさは相当なものだ。それをあの雲雀がやるのかと思うと、笑いを通り越して恐怖しか感じない。そもそも彼のパンツ一丁というのがまったく想像できない。
しかし問題はそこじゃなかった。

「……ていうかさ。ヒバリさんにそんな死ぬ気弾なんか撃っても、死ぬほど後悔する事なんてないんじゃないのか? 大体俺を守らせるって言うけど、俺を守らないと死んでも死にきれないとか……あのヒバリさんが言う訳ないじゃん。下手したら死ぬか、返り討ちだよ!」

何事も自らの思う通りに動き、群れを嫌う雲雀が、綱吉を助けなければ死んでも死にきれないと思う訳がない。そしてそれを思わなければ、普通に彼は死んでしまうか、撃った銃弾を華麗に弾き返してしまうだろう。
実際、彼が銃弾をトンファーで防いだ所を綱吉は見た事がある。雲雀が死ぬ未来より、銃弾を弾いて綱吉を咬み殺しに来る未来の方が、現実味を帯びていた。
ぶるり、と身体を震わせていると、リボーンが鼻でせせら笑う。見た目が愛らしい赤ん坊なだけに腹立たしいを通り越してなんか不気味である。

「これだからお前はダメツナなんだぞ。さっきも言っただろ。これはただの特殊弾じゃねぇ。シャマルと俺が共同で開発した特殊弾だ」

ふふんと言わんばかりに胸をそらすリボーンを、綱吉はただひたすら胡散臭げに見つめた。と、いうよりも不安がより一層増した。リボーンだけでも手に負えないのに、更にシャマルまで加わると本当に手がつけられない事態になりそうだ。いや、なるに違いない。

「この特殊弾はツナの血が混ぜ込んで作った特別製だ」
「と、特別製……? 何がどう特別なんだよ」
「まあ色々改良してあるが、特徴を言うならホーミングシステムが組み込まれてるってのと、それによる本人の意思を超越した強制力だな」
「なんかそれだけ聞いてもヤバそうなのがわかるな…… ていうか、ホーミングって何?」

首を傾げて尋ねると、リボーンが「日本語で言うなら追尾システムだな」と教えてくれた。ホーミングという単語は聞き馴染みがなくても追尾というのならなんとなく字面からも想像できる。要するに後を追うシステムなんだろう。そしてこの場合、話の流れ的に後を追う対象は血の持ち主……即ち綱吉という事になりそうだ。
自分の後を雲雀が全速力で追尾してくるのを想像し、綱吉はまたぶるりと身体を震わせる。そんな綱吉に構う事なく、リボーンは機嫌よく話を続けた。

「これを撃ちこまれた相手はお前の危機を察知したら、後悔しなくても死ぬ気でお前を助けにくるんだぞ。しかもホーミングシステムを搭載してあるから、どこにいても絶対に駆けつける優れモノだ」
「……パンツ一丁で?」
「さっきも言ったじゃねーか。これは死ぬ気モードになる弾だってな」

つまり、今リボーンの手の中で転がされている特殊弾を撃ち込まれた人間は、綱吉の危機を察知して死ぬ気モードに突入し、たとえどんなに離れた場所にいたとしてもかけつけて助けてくれる、という事か。
パンツ一丁で。




「沢田綱吉を、守――――る!」

急に起き上がったかと思うと、バリーンと雲雀の着ていた並盛の制服が破けて部屋に散らばった。そして雲雀は額に炎を灯した状態で、綱吉を庇うようにリボーンの前に立ち塞がる。

 トランクス一丁で。

「沢田綱吉を守る! 守る守る守る!」
「いやいやいやいやヒバリさん駄目ー! そんな格好して許されるのは俺位であって、ヒバリさんとかは駄目ですってば!」







こうして綱吉と雲雀の受難がスタートした。


表紙は甘ぽてとさんから頂きました。いつも素敵なものをありがとうございます…!
とりあえず雲雀をパンツ一丁にしてやろう、という気持ち1つで書きました。
コミカルに見せかけて地味にシリアスだったりするのはいつもの事です。笑